米ダルトンインベストメンツ社 代表取締役ジェームス・ローゼンワルド氏 インタビュー

2007年6月、当社代表取締役 三田邦博は米ダルトンインベストメンツ社を訪れ、オペレーティング・チーム、コンプライアンス・チームとのミーティングを行いました。
その際、代表取締役ジェームス・ローゼンワルド氏のインタビューも行いました。以下に、そのインタビューの概要をまとめました。

三田(以下「M」):ダルトンインベストメント社の歴史を教えて頂けますでしょうか。

ローゼンワルド゙氏(以下「J」):ダルトンインベストメント社は1999年に設立されました。
この時期はアジア金融危機の時期でタイバーツの切り下げに始まり、韓国のIMFによる支援、ロシアの破産、中国、ロシア債券の破綻がありました。
1997年に私は一旦、リタイアして、ゴルフをしたり、ワイフと一緒に映画に行くなど、生活をエンジョイしていたのですが、この危機に直面して、再び運用の絶好のチャンスが到来したと考えました。そこでダルトンを設立し、いくつかのファンドをたちあげました。

M:最近の運用の活動は?

J:最初はいくつかプロダクトがありました。 ディストレス証券ファンドは7年間で14%の高いリターンを上げました。ベンチマークに対しても年率700ベーシスも高い成果を上げました。
ただし、これ以上の運用機会は無いとの考えで、昨年全て投資家に償還いたしました。このファンドは、私のもう一人のパートナーである、スティーブ・パーシキーが運用していますが、もしまた投資の機会が到来すればファンドを立ち上げで資金を出してもらうということになっています。
私にはもう一人のパートナーがいます。ギフォード・コムです。彼は1999年に株式のファンドを立ちあげました。このファンドのパフォーマンスは10年弱(実質的には8?9年で)で6倍になりました。年率複利で22%になります。
2003年より東京オフィスを拡大し、日本株の調査体制を強化しました。この時期は日経平均が7,000円台に低迷していた時期です。その後日本のビジネスも拡大してきています。
また2005年には今後の中国の高い成長に着眼し、中国株ファンドを立ち上げました。このファンドはその後極めて高いパフォーマンスを出しています。
その後日本では他の運用会社では行っていないユニークなディールを行っています。
サンテレフォンに対するMBO、買収防衛策に対するプロクイシーファイトなどを行っており、こうした活動を通じて、株主価値の向上を目指しています。我々の友好的なアプローチにより、株主デモクラシーが実現し、株主価値が向上し、運用成果の向上の実現が出来ると考えています。

私の家族の日本株との出会いは1960年代にさかのぼります。私の祖父が1963年に日興證券のNYに初めての外人の社員として入社しました。その後日本株のアナリストとして、長い間活躍しました。その間に私もサマーインターンで、日興證券で働いていたこともあります。祖父は25年ほど日興證券NYに勤務の後、友人のいる大和證券NYに移り、70代後半から80歳はじめまで仕事を続けました。
したがって私の得意とする分野は日本、アジアの市場です。私はソロスファンドの運用を1990年代初頭より行っておりましたが、日本、韓国、インドネシア、タイ、シンガポールなどのアジアのニッチなマーケットを中心に運用してきました。
長年こうした市場で運用を行ってきましたが、ダルトンの運用の全ての基本的な哲学はバリュー運用です。 バリュー運用の考え方は1950年代のベン・グラハムの名著(証券分析)に基づきます。ベン・グラハムのコロンビア・ビジネススクールの弟子で一番有名なのが、ウォレン・バフェットで、21世紀最大のバリュー投資家といわれています。
ダルトンのバリュー運用の考え方は、株価が、プライベート・エクイティーマーケットないしは公開市場でのあるべき株価に比べて大幅にディスカントになっている会社に投資を行うことです。
そのために東京のアナリストが年間1,000社近く会社訪問を行い、ボトムアップリサーチをおこなっています。
バランスシートの分析だけではなく、外国の会社が日本の会社を買い取る場合にはいくらで買うかというフランチャイズ・バリューの査定もおこなっています。
競争相手、サプライヤーなども同時に分析し、企業の総合的評価に基づく価値に比べて割安な場合に投資を行います。こうしたアプローチは基本的にはベン・グラハム、ウォレン・バフェットの考え方と違いはありません。
また、日本株、中国株でも同じ考え方で運用しており、ダルトンのファンドマネージャーは全てこの考え方を共有しています。

M:なぜ15-30社に集中投資するのでしょうか。

J:最初はいくつかプロダクトがありました。
もし30社以上に分散投資をするとパフォーマンスはインデックスと同じようになります。
ダルトンの方針は全体のマーケットをアウトパフォームしてアルファを付加することです。

その方法としては:
もっとも熟知している会社に投資
業界で最良の会社に投資
もっとも株価の安い会社に投資
経営者よりも会社の内容をグローバルベースでよく知っている会社に投資

などのアプローチがあります。バランスシートの内容がよく、競争力のある製品をもっていることが重要です。
我々はまず会社をピックアップし、マネジメントに我々の持つ金融技術や経験などから様々な提案を行い、企業価値の向上を図ります。
卵を買うときに大きなバスケットを買うか、小さなバスケットを買うか、どちらがいいか。
ダルトンは小さなバスケットを好みます。あまり大きなバスケットは魅力に欠けます。
我々は少ない会社に集中投資を行い、それぞれの会社と親しくなり、内容をよく知ることを目指します。
ただ会社によってはなかなか親しくなれない時もあります。会社といい関係を築くことが佐野社長の東京での役割です。
ダルトンは積極的ですが、常に友好的なアプローチをとります。頭ごなしに提案は行わず、紳士的なアプローチをとります。マネジメントには必ず他の多数の選択も用意します。

M:日本の市場についてどのようにお考えですか?

J:日本の株式市場はローカル市場ではなく、国際的な市場になりました。
外人持ち株比率は現在30%以上です。私の祖父が1960-70年代に日本株を始めた頃は、外人持ち株比率は5%程度でした。ここ40年で5%から30%へと大幅に変化したわけです。
日本は高齢化社会を迎え、年金受給者、退職者などの株主から、リターンの要求が増大してくるでしょう。
米国でも1980-90年代に同じ現象が出ました。それ以前の米国では主要株主は銀行、保険会社であり、個人は少なく、経営者に対しての要求は無かったのです。
しかしながら1980年代以降、非有効的TOB、プロクシーファイト、M&Aなどが活発となり、株主からの経営者に対する要求が増大しました。
いよいよ日本でも経営者に対する株主の要求が出始めました。日本では1990年後半から2000年にかけての、自社株買いの税制改革、最近ではテンダーオファー、議決権争奪などが頻発。
村上ファンド、スティールパートナーズなどの投資家が出現し始めました。アメリカと同様な現象がこれから日本でも頻発することになると思われます。日本でのこうした投資機会はまだまだこれからでしょう。

M:ポイズンピル等の買収防衛策について海外の投資家はどうみていますか。

J:ポイズンピル導入は弁護士にとっては大きなビジネス機会となっています。ポズンピル導入、解除の仕事は今後も増えそうですね。弁護士はリッチになります。但し、コストは株主が負担していることを忘れてはなりません。
現在、日本ではポイズンピル導入が盛んですが、アメリカではポイズンピルは成功しませんでした。

今までは日本の企業は株主の声を聞きませんでした。一方で、今までは大株主となっている銀行、保険会社、サプライヤー、顧客などの関係先のからは色々なアドバイスはもらい、経営の改善につなげてきています。
顧客からは製品の開発のアイデア、サプライヤーからは生産プロセスの改善、銀行、保険会社からは金融面、特に借り入れコストの低減などのメリットを享受しました。今後は、我々株主が企業に対して、企業価値向上のアドバイスを行う時代になっていきます。
ダルトンは今までとは違ったグローバルな観点から、プライベートエクイティー・コンサルティングの経験者により、企業に対して、きわめて付加価値の高いアドバイスを提供できます。これにより資本構成の最適化が可能となります。
日本は、米国のちょうど20年前の状態と似ています。ただし、現在の米国は、株主の力があまりにも強く、経営者が株主の声ばかりを聞き、顧客、サプライヤーの声が十分に反映されていない傾向が出てきています。
これは欧州でも似た傾向です。欧米ではマネジメントは日本ほど顧客、サプライヤーを重視していません。やはりバランスが必要です。株主ばかりみて経営するのも問題でしょう。
ただし、米国ではいずれのディールも、例えばリストラクチュアリング、M&Aなどですが、友好的になってきています。以前は非友好的と言われたアイカーンでさえ友好的なアプローチです。
経営者はアイカーンに対して、是非うちの会社に来てボードメンバーとして経営アドバイスをしてほしいと要請しています。経営者はさまざまな株主からの意見を素直に聞くようになっています。
ダルトンはPE、M&A、バリュー投資などの専門家を擁し、株主として企業に対してアドバイスができます。
我々はエレベーター、化学製品の専門家ではありませんが、資本市場に関する付加価値のあるアドバイスはできます。
彼らは生産の現場での経験はありますが、金融市場の知識、経験は乏しい。ダルトンの優秀なスタッフ(NYU,シカゴのMBAなど)の経験が活用できます。
日本ではこうしたアプローチは始まったばかりです。私は黒船のペリー提督みたいなものです。

M:経営者が株主の考え方を受け入れるようになるまでに日本はあと何年位必要ですか。

J:私は、来年50歳になります。三田さんはいくつですか。

M:もうすぐ37歳です。

J:私はこのトレンド、投資機会は日本ではこれから20年は続くと思っています。その頃には私も佐野社長も70歳代でリタイアの時期です。
その頃には今の欧米と同様になっており、黒船も必要は無いでしょう。
ただ、日本は一度方向性が定まると急速に変化するので、5-10年位で十分かも知れません。
そうなれば私も佐野社長もまだ60歳代でリタイアには早いので、次の投資のビジネスチャンスを探り始めているかもしれません。

2007年6月
Interviewer 三田邦博

ライン

商号:三田証券株式会社  金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第175号
加入協会:日本証券業協会

手数料及びリスクについて:当社のホームページに掲載されている商品・サービス等(以下「商品等」という。)をご利用頂く際には、各商品等に所定の手数料・諸費用等(以下「手数料等」という。)をご負担頂く場合があります。
また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。各商品等にかかる手数料等及びリスクについては、メニュー画面のバナー・リンク又は各商品等のページに記載されている説明、契約締結前交付書面、目論見書その他説明書類(以下「説明書類等」という。)を十分にご確認ください。取引の形態や内容によって各々の取引の条件が異なってくるため、一般的なサービスの概要を説明したページには、ホームページ内に手数料等や個別取引のリスクを記載することができません。
これら商品等をご利用の場合は、説明書類等に記載されている手数料等及びリスクを十分ご確認の上、お取引賜りますようお願い申し上げます。私募商品については、広告等を行い募集する意図を持たないため、ホームページ内に各商品等商品の内容や手数料等についての説明書類等は掲載しておりません。私募商品のお取引をされる場合は、投資家の皆様に提示する説明書類等(各種契約書、告知書等を含む)を十分ご確認、ご理解頂いた上、ご投資賜りますようお願い申し上げます。